メタバースでビジネスをグロースさせるには?

ポジティブな話題もネガティブな話題も飛び交う混沌としたメタバース市場ですが、よくわからないが故にまだまだ様子見の企業も多いかと思います。市場を体系化して整理することにより、ビジネスをグロースさせるヒントを探ります。

メタバースに定義はない!?

メタバースには世界共通の明確な定義がありません。人・企業により捉え方が異なるのが実態であり、その捉え方により市場予測も異なるのです。ここでは広義のメタバースを扱います。そして、それはXRとも言えます。XRとは、「VR」「AR」「MR」「SR」などの総称ですが、これらの正しい認識もメタバースの理解には必要です。

VR:仮想世界のみの3次元空間(仮想100%)

AR:現実世界に仮想世界を加えた3次元空間(現実>仮想)

MR:現実世界と仮想世界を融合しリアルタイムで相互影響する3次元空間(現実⇆仮想)

SR:現実世界の一部を仮想世界に代用させ、区別がつかなくなる3次元空間(現実=仮想)

今回はXR(広義のメタバース)の中でも活用方法が見えつつあるVRとARを中心とします。なお、メタバースはヘッドマウントディスプレイを装着しているイメージがあるかもしれませんが、裸眼でも体験可能ですし、デバイスはPCでもスマホでも構いません。また、アプリでもブラウザでも可能です。この辺りは誤解されている方も多いように思いますが、メタバース=ヘッドマウントディスプレイなどの固定観念は取り除きましょう。

VRはゲームが主戦場!

VRを企業が活用する目的は2つです。企業と顧客(もしくは人と人)のエンゲージメントを高めるEngagement modelと、モノやサービスの売買という経済活動を行うEconomic activity modelです。それぞれに代表的なジャンルがあり、そのジャンルに適したPFがあります。(図1参照)

ユースケース

Engagement modelの中で注目すべきジャンルはGAMEです。GAMEの代表的PFにFortniteがあります。世界・日本のゲーム人口は年々増加していますが、Fortniteのプレーヤーは多いときは世界で3億5千万人もいました。これだけ多くの人が集まると、ゲーム以外にも様々なビジネスが可能となります。例えばFortnite内でトラヴィス・スコットがライブを行い1,230万人の集客がありました。米津玄師さんや星野源さんもFortnite内でライブを行なっています。ライブだけではなく、Fortnite内ではハイファッションからストリート、そしてスポーツブランドまで様々なファッションブランドがアバター用のアイテムを有料・無料で提供しています。ゲームとファッションの連携は深まっており、グローバルのファッションアイテム市場は既に5,000億円を超えるまで成長しています。またFortniteでは企業向けのオリジナルマップが用意されています。Fortniteの中に自分だけの空間を作ることが出来るのです。飲食企業や自動車企業など、様々な企業がFortniteをマーケティングのPFとして活用を開始しています。なお、Fortniteに特化したメタバース制作スタジオも設立され、日本でも既に実績があります。

VRを含めた最近のゲームには、コミュニケーション機能が搭載されています。今の小学生は学校から帰ってくるとゲームで遊びつつ、お友達とチャットで会話しています。そういえば、昨年放映されたドラマ「マイファミリー」では、ゲームのチャット機能で主人公と犯人がやり取りしていましたね。このように、多くの顧客を武器にビジネスを拡張して成功しているPFを我々はよく知っています。そうです、LINEです。2011年にコミュニケーションPFとして誕生しましたが、2014年に金融事業、2015年には動画や音楽の配信も開始し、今では非常に多機能なPFに発展しています。そう考えると、10年後にはFortniteなどのゲームPFがLINEに取って代わっている可能性すら感じます。

Economic activity modelにも少し触れておきます。モノやサービスの売買という経済活動を行うモデルです。VR上ではファッションや食品などからアート作品、さらにはバーチャル空間の土地まで様々なものが売買されていますが、メインはやはり日常のお買い物です。バーチャルマーケットというVRイベントが2018年から開催されていますが、2022年は2回開催され、イベント1回あたり100万人を集客しています。来場者は日本人6割、外国人4割であり、日本発の大規模な期間限定グローバルイベントであることが伺えます。さて、ここで「わざわざVRでなくてもECでいいのでは?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。しかしながらVRでのショッピングにはECにはない良さがあります。あるテナントでは50名もの社員が交代してアバターで接客しています。つまり、それだけ顧客が店員とのコミュニケーションを楽しんでいるということです。購入する商品はECでも売っていると思いますが、購買するプロセスが異なります。ここが大きな違いです。ECは、欲しい商品がすぐに見つかる、レコメンドされる、などの利便性が重視されてきましたが、VRショッピングはそれだけではありません。オンライン上で店員とコミュニケーションを図りながら購買に至っています。店舗とECの中間であり、新しい購買スタイルとして若者を中心に根付く可能性が十分にあります。

期待と失望のNFT

Economic activity modelの流れで、NFTにも軽く触れておきます。NFTは購買したモノの「所有権の証明」と「所有権の転売」という2つの機能がある為、経済活動と高い親和性があります。

アバターのファッションアイテム市場が拡大していると述べましたが、その中でも限定品などレア物はNFTが付いているケースが散見されます。デジタルアイテムはコピーが容易であるので、唯一無二だと「所有権を証明」する為です。誰も偽物を持ちたくないですよね。 もうひとつの機能の「所有権の転売」はアートやコレクターズアイテム等の売買が代表的な例ですが、世界最大のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaでは取引額が最盛期の1%(つまり99%減)になっています。リアルでもアートやコレクターズアイテムは一部の人だけですし、転売による売却益狙いだとしてもマーケットへの参加人数が少ない為、投資市場としては成立していません。

ARはフルファネル!

ここからはARについてです。ARにも様々なユースケースがありますが、フルファネルのフレームで整理が可能です。(図2参照)

フルファネル

フルファネルは一番左の認知と興味関心からスタートしますが、世の中に溢れる大量の情報に埋もれず自社商品やサービスをアピールする為にはUnexpected Experience(予期せぬ想像を超えた体験)が必要です。その為にARを活用してプロモーションを行うことがあります。例えばUSのバーガーキングが実施したARプロモーションは、スマホで競合店の看板を見ると、その看板が炎上してバーガーキングのクーポンがもらえるというものでした。しかしながら興味関心を喚起しても、本当に購入するかは別問題です。ADKが過去に実施した調査では、ある商品について購入意向で10段階の10(絶対購入する)と回答した人の20%程度しか実際には購入していませんでした。興味関心と購入の間には依然高いハードルがあります。その為、例えば現実世界にARのオブジェクトや文字を重ねて表示し、店舗などの目的地までナビゲーションしたりします。Google Mapでも表示できない施設内や地下の店舗等についても案内可能なため、目的地までスムースに到着可能です。また、ECサイトでは実際に届いた商品がイメージに合わなかったという経験がある方も多いと思います。そのような失敗を防ぐ為、家具なら家に置いたイメージを、ファッションであれば身につけたイメージを、ARでシミュレーション出来ることもあります。なお、この段階は顧客のイメージ通りが大切な為、Expected Experience(予想通りの体験)の構築が重要です。

さて、苦労して獲得した顧客とは末長いお付き合いをしたいものです。つまり右ファネルです。顧客に自社商品やサービスなどを好きに、そしてファンになっていただく為に、プロモーションという一時的なキャンペーン型ではなく、恒久的に使って頂けるサービスをARで用意しています。例えばプロスポーツチームでは、スマホを選手にかざすとデータがスタッツ等のデータが表示されたりするなど、ファンにとってはたまらないサービスを提供しています。このようにARはフルファネルのあらゆるところで活用されています。しかしながら、ARを活用してフルファネルに一気通貫で対応している企業はまだ見受けられません。ARが万能という訳ではありませんが、フルファネルのあらゆるステージで活用できる可能性があることは知っておいて損はありません。

メタバース検討の6大要素

近年、多くの企業がメタバースへの取り組みを開始しています。従って、メタバースを取り巻くサプライヤーサイドのセールス活動も積極的です。しかしながらサプライヤーサイドの各社の視点から語る為(当然ですが)、色々な視点が入ってきて我々が全体像を理解することが難しくなっています。そこで、検討すべき要素を整理しました。(図3参照)

メタバース検討要素

プラットフォーマーは多数存在しますが、それぞれ特徴が異なります。PFは各種テクノロジーから成り立っていますが、それも様々あります。視聴スタイルは冒頭で述べた通りヘッドセットとは限らず、色々な方法があります。またここでは説明は割愛しますが、組織/運営方法もDAOが検討要素としてあります。そしてそもそもの顧客体験(顧客価値)と企業目的があります。
合計で6要素ありますが、各要素の中にも選択肢が多数あるため組み合わせは無限大です。最適解を見つけていかなくてはなりませんが、我々alphaboxは顧客体験(顧客価値)を最重視しています。ここが無いと成功はあり得ない為です。また近年マネタイズが難しいと言われていますが、そもそも顧客から支持を得ていないものがマネタイズ出来るはずもありません。顧客体験(顧客価値)について、皆さまはどの程度深く議論をされていますでしょうか?

最後に

alphaboxでは顧客体験(顧客価値)の発想方法としてInnovationFISHというフレームワークおよびワークショップを開発しました。(図4参照)

InnovationFISH

ユーザーのペイン・課題が起点となる「デザイン思考」と、個人や自社の思いが起点となる「アート思考」の融合により、今までにない新しい顧客体験(顧客価値)を創出します。メタバースを活用したマーケティング・ビジネスのご相談がある方は、是非ともお問い合わせフォームよりご連絡ください。

メタバース

マネージングディレクター

藤田 岳志

ADKと日本IBMの共同ユニットalphabox所属。「DXを通じて、CXを実現する。」というミッションのもと、金融企業からプロスポーツチームまで多様な業種において、マーケティング視点でのDXを支援。

メタバース

CXコンサルタント

杉本 雄飛

顧客分析・マーケティングスキルを活⽤したCX設計を担当。前職ではスマートフォンアプリを⽤いたプロスポーツチーム向けのファン化促進施策の企画・運営を推進。

メタバース

CXコンサルタント

江澤 桃子

顧客視点・企業視点からCX/UX施策を実施。前職では総合コンサルティングファームにてヘルスケア、新エネルギー、脱炭素等に関する戦略案件に従事。

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