alphabox CX Watch 第三弾「電気・ガス業界のカスタマー・エクスペリエンス(CX)」 を公開
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本調査の特徴・背景
電気・ガスの小売企業は、小売全面自由化(電気:2016年4月、都市ガス:2017年4月)にともない、2022年9月末時点で登録事業者数は約730と競争が激化する一方で、商材の特性上、他社との差別化を図るのが難しく、価格の安さで比較検討され契約先が選ばれることが多くなっています。
その結果、価格競争の限界や原材料高騰の背景もあり、新電力の倒産、大手電力会社の値上げが発生している状況です。また、従来からの他エネルギーとの競合に加え、都市ガス間競争が進展しているほか、ガスにとどまらない多様なサービスが提供されるなど、ガス事業者にも様々な取組みが求められています。
ユーザーが、電気・ガスの小売企業の契約・継続を、価格だけでなく付帯サービスも含めた顧客体験価値により判断する場合、企業が他社との差別化を図ることができるのでは、との仮説から、このたび非価格選好であるユーザーに対してデプスインタビューを実施し、そこから見出したCXインサイトを分析しました。
主な調査結果
(1)4つのCXインサイト:「賢い消費」「社会貢献感」「生活上の安全安心」「楽しい時間/特別感」
満足度の高い非価格選好ユーザーへのインタビューを実施し、以下、4つのCXインサイトの重要性が分かりました。
①賢い消費:ちょっとした工夫で、生活の快適性を損なわず・無駄を減らす、賢い生き方の実現を手助けしてくれる。
電気・ガスの使用量の見える化アプリを使っているユーザーが、節電に関しての自分なりの工夫が、使用量にどう反映されているのかをモニタリングすることで、“過去の自分からの成長“、”他者よりも頑張っていると感じられる“、”達成感、ゲーム性“を体験することで、満足度が向上しました。
②社会貢献感:単なる「電気・ガス代を減らそう」や「ポイントを獲得しよう」という呼びかけではなく、気持ちが動くよう、その行動の先にある社会貢献や大義名分を示してくれる。
ある節電プログラムに参加したユーザーが、自宅の電気を消し、商業施設に出かけ、もらったクーポンで食事を楽しむことで、“社会貢献”感”(少しでも社会貢献につながる)”や、“ミッション達成などのエンタメ性”を体験して、満足度が上がりました。一方、電気を消すとポイント付与するという別の節電プログラムに対しては、生活が単に不便になるだけでは心が動かないという声もありました。“快適な生活を損なうだけと感じさせない”ことも重要です。
③生活上の安全安心:電気・ガスだけでなく、水回りなどの生活上のあらゆるトラブルに対応してくれる安心感や信頼感がある。
電気・ガスへのトラブル対応に加え、水回りなど生活上のトラブル対応の体験が、満足度を高めることが分かりました。生活上のトラブルは、早い解決を望む場合が多く、特に“即時に現場に駆けつける”サービスを体験したユーザーの満足度は非常に高く、“ガス・電気以外も豊富なトラブル対応メニュー”があることで、安全安心感が高まり、契約者のみならず“契約者のご家族のことも意識したケアができる”対応も高い満足度につながることが分かりました。
④楽しい時間/特別感:ただの電気・ガスの契約だけにとどまらないエンターテイナー。普段の生活にちょっとした彩りを与えるような、時間・空間を演出してくれる。
都内商業施設の駐車場が1時間無料になるなど“日常生活に寄り添った少しの嬉しいこと”や、年間利用額に従ってホテルのランチをペアで楽しめる招待券など“日常生活を少しだけ贅沢・豪華に”の体験も満足度を高めました。このサービスを提供した企業のケースでは、グループ会社の遊休資産を上手に活用することで、コストを最小化し、満足度の最大化を図ることができました。
(2)複数のインサイトを組み入れた施策の有効性
各社同じような施策でも満足度の違いや、施策間でも満足度の相対的な高低があることが分かりました。例えば、同じトラブル対応サービスでも、即時訪問のある・なしで、満足度の違いが出ています。即時訪問がないサービスは、本サービスの体験を通じて満足度が下がりました。CXインサイトにつながるサービスを設計しなければ、体験価値を毀損し、満足度が下がる傾向があることに注意が必要です。また、CXインサイトを複数組み入れたサービスは、単一のインサイトを組み入れたサービスよりも満足度が高くなりました。
4つのCXインサイトを正しく組み入れたサービスは、他社と差別化した顧客体験価値の提供につながることが分かりました。
alphaboxでは、これからもCX調査を継続して実施するとともに、最適な顧客体験の実現に向けたお客様企業の変革支援を推進していきます。
ー「alphabox CX Watch」 第三弾 調査概要ー
目的:電気・ガス業界において小売企業を選定する際、また契約の継続に寄与するCXインサイトを得る。
調査対象:次の条件にできるだけ多く当てはまる方
- 電気やガスの小売先企業を決める際に、価格以外のこだわり条件がある
- これまでに5回以上、契約会社を変更してきた
- 愛用している、ファンと公言できる電気やガスの小売企業がある
- 電気やガス会社が提供している付帯サービスをよく利用している
・サンプル数:17サンプル(1万人からスクリーニング)
・調査方法:デプスインタビュー@オンライン
・調査時期:2022年12月~2023年1月
・調査委託先:マクロミル
CXディレクター
佐々木 祐輔
CX、NPS向上を目的としたマーケティング戦略の立案や顧客接点の改善検討を専門領域とし、業界・業種のビジネス構造や、生活者の意識・態度・行動変容に至るプロセスをつなぎ、生活者の満足・不満につながる理由と解決方向性の導出を得意としています。
CXコンサルタント
山口 璃生
デジタルトランスフォーメーション戦略・ブランディング戦略を起点とし、リアル・デジタル体験の融合、デジタルサービスの設計、データドリブンマーケティング、営業業務の効率化・高度化などに従事しています。